女性がライオンの口を両手で包みこんでいます。力で押さえつけるのではなく、なでるように扱う姿勢です。頭上に浮かぶのは魔術師と同じ無限大の記号。ひとつ前の戦車が制御なら、こちらは手なずけること。
力のカードの前では、強く出るほど物事がこじれます。相手がはじめから腕組みをして話を聞いているとき、状況が張りつめているとき、押せば押すほど固くなる種類の問題。こういうときに必要なのは強さではなく時間です。ライオンは脅されたからといって口を開けたりしません。
自分自身に対しても同じです。このカードは怒りや恐れをなくせとは言いません。そもそもなくせるものではないからです。そのかわり、それを連れて歩けると言います。怖くてもやること、腹が立っても会議室ですぐにぶちまけないこと、返信を書きかけて送信ではなく下書き保存を押すこと。ライオンを殺すのではなく、そばに置いておく絵なのです。
逆位置では、その余力が底をついています。ずっと我慢してきたけれどもう限界という時期、あるいは自分を信じられなくて何も手につかない時期。たいていは休めという意味です。週末ずっと寝ていたのに月曜の朝が鉛のように重いなら、それは怠けではありません。忍耐は無限ではないのです。底をついたことを意志の弱さと取りちがえると、さらに削られるだけです。
ここで言う力は、押さえつける力ではなく、手なずける力です。このカードを「我慢しろ」と受けとって、嫌なことひとつ言わず、さびしさも見せずに歯を食いしばって耐えるだけでいると、いつのまにかすり減りきった逆位置の側に移っています。
言いたいことを飲みこんだ日が今月だけで十日を超えているなら、ライオンを手なずけたのではなく、口をふさいでいただけです。
力は、まだ進行中の物事を語るカードです。悪魔がそばにいれば、手なずける相手は外ではなく内側に。太陽まで出ていれば、山場はもう越えています。
