雲の間から出てきた手が、カップをひとつ支え持っています。カップからは五筋の水があふれて下の池へ落ち、池には睡蓮が浮かんでいます。上からは鳩が一羽、小さな聖餅をくわえてカップの中へ降りてきます。器の大きさより入ってくるもののほうが多くて、あふれている絵です。
カップのエースが語るのは、気持ちの始まりです。何かが心に入ってきはじめた、ということ。知り合ったばかりの人のことをつい考えてしまったり、しばらく何も感じなかったことがまた楽しくなったり、褒められると手を振って打ち消していた人が、今回は素直に「ありがとう」と受け取ったり。仕事より人、計画より気分にまつわる話が多いカードです。
逆位置で出たときは、カップがふさがっています。傷つくのが怖くてわざと閉じている場合がひとつ、疲れすぎて中が干上がっている場合がもうひとつ。前者には開く勇気が、後者には満たす時間が必要です。この二つを取り違えると処方がずれます。底まで疲れきった人に「心を開いてみて」と言っても、開くものが残っていないんです。
最近こちらへ向かってくる気持ちを、ちゃんと受け取っているでしょうか。それとも見ないふりをして流しているでしょうか。
よく「恋が始まる」とだけ読まれますが、それはいくつもある道のひとつにすぎません。エースは相手より先に、自分の側の変化を語ります。新しい人がいなくても、何年も触っていなかった楽器をまた弾きたくなったなら、それもこのカードです。
カップの2と一緒に出たら、開いた心が実際のひとりとつながります。星と並べば、始まりというより回復のほう。長く乾いていたカップに、また水がたまりはじめたという意味に読みます。
