市をわかせた大道芸人
次がないかのように、今日を全部使いきってしまいます
見物人が帰ると、そわそわしだした大道芸人。
ズバリ言うと
認めたくないかもしれないけど- 01場を盛り上げるだけ盛り上げて、家に帰るとひとりでむなしくなります
- 02「これ本当に面白いんだけど」と言って、自分がいちばん先に笑っています
この結果になった理由
ESFPこんな人です
芸の輪ができれば、まんなかにはいつもこの人がいたはずです。とんぼを切り、声を張り上げ、見物人を笑わせていたでしょう。舞台に立てば足が震えるどころか楽しくてしかたなく、人が集まるほど調子に乗って、静かな部屋にひとりでいるとかえって落ち着かなかったんです。
飴売りの鋏の音が聞こえただけで、肩から踊りだしていたかもしれません。いまこの瞬間の盛り上がりを生かすのが、この人の才能でした。遠い先を量るかわりに、目の前の場を熱くすることに全力を注いでいたんです。
見物人が泣いているか笑っているかを、体で読んでいた人です。最前列の顔ひとつを見ただけで次の芸を変えられるほど勘がよく、正しいかどうかより、あの人がいま楽しいかどうかを先に見ていたはず。情にもろいのも、そのためです。問題は、芸の輪が解けたあと。太鼓をたたいて騒いだ日の夜がいちばん寂しかったでしょう。一日じゅう人を笑わせていた人が、荷物をまとめてひとり残る時間をいちばんつらく感じていたはずです。それでも次の市が立てば、何事もなかったようにまたまんなかへ飛びこんでいったでしょう。その場を盛り上げる芸だけは、誰にもまねできませんでしたから。
ひとつの村に長くはいられなかったはず。同じ芸を三回やれば熱が冷めるので、新しい市を探してさすらい続けました。計画よりその日の気分と足の向くまま進み、行く先々に笑いを残したけれど、自分の居場所はどこにもなかったでしょう。荷物といえば太鼓ひとつと古い扇ひとつ。いまも飲み会が盛り下がると真っ先に話しだす人なら、その気性は昔からのものです。場を盛り上げる才能も、場が終わったあとのむなしさも、そのまま。みんなで笑って別れた日、ひとりで乗る終電がやけに静かに感じるはずです。